2026年7月24日、第79回富士登山競走 五合目コースを走ってきました。
結果は1時間58分06秒(グロス)。目標だった2時間切りを達成し、山頂コースの出走資格も確保できました。
そして、このブログを更新するのは2017年1月以来、実に9年ぶりです。当時は自転車のことばかり書いていましたが、今は山を走っています。53歳、8月28日にはシャモニーでUTMB(170km・累積10,000m)を控えている。その途中経過として、まずは富士山の記録を残しておきます。
富士登山競走 五合目コースとは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| コース | 富士吉田市役所前 → 吉田口登山道 → 富士山五合目 |
| 距離 | 約15km |
| 獲得標高 | 約1,465m |
| 制限時間 | 3時間30分(馬返し関門あり) |
| 山頂コース出走資格 | 五合目関門を2時間20分以内で通過した実績 |
前半は馬返しまでのロード約10.7km(実測)、後半は五合目までのトレイル約4.3km・標高差約800m。同じレースの中に、まったく性質の違う2つの区間が入っています。
レース前の状態:心拍が上がらなくなっていた
正直、このレースに万全で入れたわけではありません。
7月頭に85kmのトレイルレース(累積4,747m)を走ったのですが、その後、追い込んでも心拍が上がりきらない状態が続いていました。20%を超える斜面を登っても心拍が90台。いわゆる中枢性疲労です。
7月11日には富士山で練習を組みましたが、1本登った時点で同じ症状が出て中止。「これはUTMBに間に合わないかもしれない」と本気で思っていました。
だから今回の富士登山競走は、タイムよりも**「心臓が戻っているかどうかを確かめる場」**という位置づけでした。
スタート〜馬返し:10.7kmを1時間03分
市役所前をスタートして、しばらくは市街地の緩い登り。ここは抑えて入りました。心拍は155前後で安定。
浅間神社を過ぎて中ノ茶屋、そして馬返しまで、ひたすら「走れる登り」が続きます。Garmin実測で10.7km、通過1時間03分16秒。
公式の区間距離は11.4kmと案内されていますが、GPS実測とはズレます。ペース計算をするときは自分の時計の数字を基準にしたほうがいいです。
馬返し〜五合目:4.3kmに約55分
ここから世界が変わります。
4.3kmで標高差約800m。 1kmあたり約13分。数字だけ見ると「遅い」ですが、実際は走れる斜度ではありません。手で膝を押しながら、ほぼ壁を登っている時間帯です。
ここで大事なのは、走ろうとしないこと。斜度15%を超えたらパワーハイクに切り替える。同じ垂直速度を出すのに、走るよりハイクのほうが心拍で25拍安く済む、というのは事前のテストで確認していました。
データで見た結論:心拍は戻っていた
今回いちばん嬉しかったのは、タイムではなく心拍でした。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 最大心拍 | 167 bpm |
| 平均心拍 | 158 bpm |
| 挙動 | スタートからゴールまでフラット |
最初から最後まで、落ちなかった。 勾配20%の区間でも上がるべき時に上がった。
7月頭から3週間、ずっと不安だったものが、この数字ひとつで消えました。数字は正直です。
反省:渋滞の処理で、コストだけ払った
一方で、はっきりした課題も残りました。
馬返しから上はシングルトラックが続き、当然のように渋滞します。私はそこで詰まって減速し、道が広くなったところで一気に上げて抜く、というのを何度も繰り返しました。
そしてデータを見ると、これがはっきり出ています。
- 13〜14km地点:パワーは196W・204Wまで低下
- 同区間:心拍は156.9・158.6でほぼ変化なし
つまり、進んでいないのに、心臓は働き続けていた。 加減速を繰り返すと、平均パワーは下がるのに心拍は下がらない。これがその走り方の指紋です。
抜くために使った出力は、全部前借りです。2時間のレースなら踏み倒せる。でも33時間かかるレースなら、確実に請求が来ます。
「渋滞に合わせる」のではなく「渋滞に入る前に位置を取る」。 次の課題はここです。
使用ギア
今回使ったものを、選んだ理由と一緒に書いておきます。
| カテゴリ | 使用品 |
|---|---|
| シューズ | ALTRA MONT BLANC CARBON |
| 靴下 | Sockwell |
| タイツ | CW-X HPO375(BUILDER MODEL) |
| 心拍計 | COROS Heart Rate Monitor(上腕アームバンド) |
| GPSウォッチ | Garmin Fenix7 |
| サプリ | メダリスト カフェイン200冴 / Meitan 2RUN / パワープロダクション エキストラ オキシアップ |
| ジェル | アミノバイタル 1本 |
シューズ:ALTRA MONT BLANC CARBON
このコースを一足で行くなら、これが正解だと思っています。
理由は単純で、富士登山競走の五合目コースは「ロード10.7km + トレイル4.3km」という、性格の違う2つのレースが1本になっているからです。ロード用シューズだと後半の溶岩と岩で削られ、ゴリゴリのトレイルシューズだと前半のロードで足が重くなる。
MONT BLANC CARBON はその中間にいます。
- フルレングスのCarbitex製カーボンプレート:前半のロードでは推進力、後半では岩の突き上げから足裏を守るプロテクションとして働く
- ミッドソールは Altra EGO PRO(コア)+ EGO MAX(リム):反発と安定を両取りした構成
- アウトソールは Vibram Megagrip with Litebase:ラグは浅め(3.5mm前後)でレース志向。泥には弱いが、富士の乾いた砂礫と岩には十分
- スタックハイト29mm / ドロップ0mm
正直に書いておくと、ゼロドロップは急登で不利になり得ます。 斜度20%を超えるパワーハイクではふくらはぎとアキレス腱に容赦なく効きます。私は普段からAltraなので問題ありませんでしたが、ドロップ8mmのシューズから乗り換えて初レースで富士、というのはおすすめしません。
一方で、下山18.5kmではカーボンプレートの恩恵がはっきりありました。 疲れて足裏の感覚が鈍ってきた頃に、石を踏んでも突き上げが来ない。これは効きます。
靴下:Sockwell
メリノ系の段階着圧ソックス。狙いは2つで、長時間の足の膨張を抑えることと、下山での摩擦対策です。
富士の下山は、つま先が前に滑り続けます。ここで滑るとマメが確実にできる。メリノは濡れても保温性が落ちにくく、匂いも出にくいので、この日のように下山まで含めて半日行動する場面では扱いやすい。
タイツ:CW-X HPO375(BUILDER MODEL)
ひざ上丈のハーフタイツで、腹圧・股関節・骨盤・腰をサポートするモデルです。膝ではなく体幹側をサポートする設計。
これを選んだ理由は、登りで骨盤が後傾するのを防ぎたかったからです。急斜面を長時間登っていると腰が落ちて、脚だけで押す走りになる。腹圧が保てると、体幹から脚が出る感覚が最後まで残ります。
ただし、このモデルには膝のサポートは入っていません。 下山18.5kmを自分の脚だけで降りている、ということです。膝に不安がある人は、膝サポート付きのモデル(ジェネレーター系など)を選んだほうが無難だと思います。ここは正直に書いておきます。
心拍計:COROS Heart Rate Monitor(上腕アームバンド)
今回の記事で「心拍がフラットだった」と言い切れているのは、この心拍計のおかげです。
手首の光学式センサーは、登山競走のような場面でいちばん誤差が出ます。手を膝に置いて押す、ポールを握る、手首を曲げる──そのたびに前腕の筋肉が動いてセンサーが浮きます。実際、7月頭のレース後に「心拍が上がらない」と悩んでいたとき、まず疑ったのは自分の体ではなく時計のほうでした。
そこで上腕に移しました。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 重量 | センサー単体 約9.7g(バンド込み 約19g) |
| 方式 | マルチチャネル光学式 |
| 接続 | Bluetooth、最大3台同時 |
| 稼働時間 | 連続38時間 / スタンバイ80日 |
| 防水 | 3ATM |
上腕二頭筋の外側は血流が多く、走っても筋肉の変形が少ない。胸ベルトの精度に近いものが、胸ベルトの不快感なしで手に入ります。 装着していることを忘れる軽さです。
UTMBは33時間走る予定なので、連続38時間というバッテリーは、そのまま「1レース持つ」という意味になります。 ここが胸ベルトとの決定的な差でした。
サプリ
3つ使っています。役割が全部違います。
Meitan 2RUN(脚つり対策) カルシウム約250mgとマグネシウム約125mgを2:1で配合したタブレット。ナトリウム・カリウム・鉄も入っています。水なしで飲めるので、レース中に前兆を感じた時点でも投入できる。私はスタート前に使いました。
パワープロダクション エキストラ オキシアップ(運動前) ヘム鉄、コエンザイムQ10、ビタミンB群7種、アスタキサンチンを配合したカプセルで、運動前に4〜6粒。エネルギー産生(電子伝達系)に着目した製品です。
五合目は標高2,300m。空気は確実に薄い。効いたかどうかを個人の感覚で断定はできませんが、長時間・高所という条件で飲む前提のものを、その条件で飲んだ、という話です。
メダリスト カフェイン200冴(ここぞの1本) カフェイン200mg+アルギニン1,000mg+クエン酸1,200mg のゼリー。缶コーヒー約2.5本分のカフェインが1袋に入っています。
2時間のレースなら、実は使いどころは1回しかない。投入タイミングを間違えると、いちばん効いてほしい壁の区間で切れます。 UTMBのように夜を越えるレースだと、これを何時に何本入れるかが完全に設計の話になるので、そこは別途詰めていきます。
ジェル:アミノバイタル
馬返しのエイドで注入し、ラスト30分に備える
補給について、最後に1点だけ。
足りなくなってから入れるのでは遅い。 これが7月の85kmレースで、身体で覚えたことでした。あのときは血糖が落ちてから慌てて入れて、間に合わなかった。今回は最初から予防的に入れています。この判断は正解でした。
下山ラン18.5km
五合目でゴールしたあと、下山バスには乗らず、18.5kmを走って降りました(1時間50分)。
UTMBは累積下り10,000m。むしろ下りのほうが脚を壊します。だから下りは「タイムを狙わず、ピッチを上げて軽く流す」練習として使いました。ゴール後20分で心拍は99まで落ちていたので、回復も問題なし。
次はUTMB
8月28日、シャモニー。170km、累積10,000m。
今日の1,465mの、約7倍です。
まだ一段も登っていない気分でいます。
+ランを11日、14日、18日の3日間、本日のシクロ練ぐらいですかね。






